『自分の薬をつくる』(坂口恭平・著 2020年初版)

著者は死にたくなった人に電話番号を公開。のべ2万人から無料で相談に乗っている


カキクケコトリは大量の本を置いて、いつでも開いています。若い人ならだれでも入って本を読んだり勉強できます。

建物を、何の場所だか全く理解できずに、いぶかしがって通り過ぎる人は大勢います。学生のカップル、サラリーマン(サラリーウーマン)、おばちゃんやおじちゃん(犬を連れていることが多い)たちです。

自分たちが属している世界に何の違和感もない。それどころか身も心も充足してあらかたお腹がいっぱい。そういう人が、死にたくなることはまずないのです。

でも、だんだんと、そういう人たちは減ってきています。どういう人が増えているかと言えば、死にたくなる人たちです。統計で調べたわけではないんですけれども、心療内科の数、うつ病患者の数、そして、『自分の薬をつくる』に書いてある電話番号「いのっちの電話」に電話する人。ちょっと注意して観察すれば、死にたくなる人が増えているというがまぎれもない事実であることがわかります。

この本を読んで、私は死にたくなった人もぜひ、カキクケコトリ管理人の私に電話してほしいと思いました(電話番号はコトリの中に書いてあります)。

私は、何者か、心療内科医か?カウンセラーか?いえいえ、とんでもない。何の資格もないです。坂口恭平さんだってそうです。そもそもこの場所、カキクケコトリも意味不明の、役割がよく定まっていない場所です(入室する理由は書いてありますが、防犯のため)。

役割がよく定まっていないこと。そこが重要です。死にたい人に必要なのは、死にたくなったその人が負わされている役割をいったん終了して、別の役割を見つける作業に寄りそうことだと思います。

思い返すと、カキクケコトリを調えるための私たちの作業も、そういう意味合いを多分に帯びていました。別に誰に頼まれるのでもなく、パン屋のおっさんである私と、浪人生の藤川はここを作ることに決め、簡単な図面を書いて、材料を調達し、ペンキを塗り、木材を組み立て、掃除をし、明かりをともしました。その作業の一つ一つが、「パン屋」「浪人生」といった普段の既存の役割からの解放であり、息抜きだったのです。

ですからここの役割や定義がよく定まっていないのは道理なのです。そういう必要がないのです。

つまりカキクケコトリは場所の名前というよりむしろ、役割から自由になるための作業の契機につけられた名称です。したがって、死にたい人はカキクケコトリに参加することができるし、そのことにより、いったん役割を相対化して一息つけ、生きることを続けられるかもしれません。

なお、死にたい人が増えていることにピンとこない人も多いわけで(この建物をスルーできる人はたいていそうでしょう)、繰り返しになりますが、それはまあそうです。何不自由なく社会は整えられているのです。こうした現代、つまり、たいてい豊かだし、乳幼児死亡率も少ないし、犯罪も減っているし、一見何の不自由もない。99パーセントの人は、カキクケコトリをスルーできてしまう。

一方で、この本で坂口氏が訴えているように、ではなぜ、死にたい人が決していなくならないどころか増えているか。

これは大いなる謎であり、人類全体の今後にかかわる問題でしょう。さて、ここからは予告になりますが(2020年8月2日現在)、私はここで新刊書籍を冷蔵庫に入れて販売するつもりです。冷蔵庫で冷やして売る新本の仕入れのテーマは、まさに、「現代においてなぜ、死にたい人が増えているのか」です。さらに言えば、現代資本主義の行き詰まりとその打開に向けて、私たちは考えなければならない、そのための武器としてまずは書籍を販売したいわけです。冷蔵庫で本を売る理由や考え方については、実際に販売を始めてから開陳したいのでどうかお楽しみに。

念のため申し上げたいこと、わたしが売ろうとしている書籍は、特定の宗教本だったりとか、安っぽい陰謀論とかスピリチュアル系とはまったく異なります。そうした物をお望みの方の期待には残念ながらここでこたえられそうにありません。ごめんなさい。

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